無能日記

わらを編んで生活しています。

「この世の歩き方」が分からないまま、みんな生きている。

「聞きたいことがあるんだけど」

駅へと続く地下街は人もまばらで、昼間なのにシャッターをおろしている店が多い。隣を歩く息子が言った。

「好きなことをやるのと、苦手なことをがんばるのとどっちがいいの?」

 

"好きなことを仕事にしよう"と最近よく耳にすることがあるけれど、小5の息子に届くほど広まっていてそういう風に聞くのかな、と少し驚いた。

「なんでママに聞くの?」とたずねると、

「人生を長く経験しているから、分かるかなと思って」

ということであった。

 

 

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好きなことを仕事にすること

"好きなことを仕事にしよう"というのは、好きなことの方ががんばれるから得意になるし、続けられるからいいよね、ということだと思う。生きづらい世の中で、他人と比べるのではなく自分なりの幸せや成果を求めよう、の意味もある。

 

それについて息子が私に聞くことは、正解でもあり、不正解でもあるような気がした。というのは、私はフリーランスとして〝好きなことを仕事にしよう〟を何十年もやっているのである。

 

本を作ったりデザインをしたり、だがしやをやってみたりといろいろやっているけれど、基本的に好きなことしかしていない。好きじゃない仕事を断っているとかではないのだけれど、自然にそうなって生息している(ちなみに夫も落語家で、好きなことしかしていないし、夜8時くらいに寝る)。

 

なので「好きなことをやればいいよー!」と声を大にして答えればいいのだけれど、「なんでママに聞くの?」と若干動揺するのは、それほど成功していないから。

もちろん自分的には「こんな素晴らしい本を作ることができて最の高ありがとう!」という思いはあるし、「好きな仕事をしてこれまで生きていただけで大☆成☆功!!」とも言えるのだけど、確定申告をしていて「私の年収、少なすぎぃ?」と落ち込んだりもするので、モヤモヤしてしまう。

 

みんなはじめての人生

息子が私にたずねたように、私もまた人生について分からないことが多い。幸いお仕事でいろんな方にお話を伺うことがあるので、ついでに自分の参考になりそうなことを探っている。

 

20代の頃は、取材をしていてもつい自分中心に考えてしまい、うざさ200%だったけれど、40代の今、お話を伺うたびに発見があるし、職人さんの昔のお話を聞いて情景に涙したり、取材がとても楽しくなった。

 

著名な方にお話を伺うことが多いので、成功者バイアスみたいなものもあるかもしれないけれど、それぞれ生まれた年代、持っているカードなどがちがい、人生のなりゆき、考え方も異なる。みんなはじめての人生での固有の体験で、経験値をあげている。

 

話を受ける側も、年齢や状況が全く同じということはないので、そのまま参考にできるわけではない。しかし「こういうときこうでうまくいった」「うまくいかなかった」などを聞くことでなにかしら受け取れるものはあると思う。

 

私は説明書を読まないタイプなので、てきとうに生きていたのだけれど、

(なんだか思った通りにゲームが動かないし、ライフもヤバいぞ?)

ということに気づいて、ようやくチュートリアルを探し始めたところなのかもしれない。

 

この世の歩き方が分からないなかで、今思うこと

小学生の息子もはじめての人生で右も左も分からないことと思うが、私も私ではじめての40代であり、はじめての母なのである。

冒頭の質問には

「苦手なことを全部つぶしていくより、好きなことをがんばった方が楽しいし効果も期待できるのではないだろうか」

「とにかく生きていくことが一番大事なので、無理していやなことはしない」

「ただ、自分で苦手と思っていても数こなすと慣れで楽しくなったりすることもあるので、そこ注意」

「知ってると思うけどママは成功者じゃない」

と答えたけれど、自信はない。息子の方もちゃんと聞いてるような聞いていないような感じで、私たちは駅につき、一風堂のラーメンをいっしょに食べた。

 

おいしかった。