パパ活もママ活も、したことがない。
そんなことは当たり前だと思うかもしれない。
そうだろうか。
誰にとっても、それほど遠い世界の話ではない気がする。
大学に入学したら、相対的貧困だった
育った家は自営業であまりお金がなく、その日のおかずにもいつも苦労していた。
それなのに「なんとなく公立よりイケてそう」というだけで私大に進んだ私は、生活費を稼ぐため日々バイトに明け暮れることになった。バンカラといわれる早稲田なのでそんなものだろうと思っていたけれど、そうでもなかった。私の進学した商学部の女の子たちは推薦が多く、なんとなく持ち物にも高級感があり、育ちが良さそうだった(私は推薦の校内選抜に落ちたため一般入試)。
大学の行事でサンドイッチを作ったときのこと。私が「ヤマザキパンでいい?」と聞いたら、東京出身の女の子が「せめてpascoにして」と。(都会の人は食パンのメーカーにもこだわるのか!)と驚いたことを覚えている。
ヤマザキパンでもpascoでも高級パン屋でもなんでもいいのだけれど、なんでもいいとわかるためには、前提となる知識が必要だ。友達もいなかったし親もあちこち出かけるタイプではなかったので、私には知識が足りなかった。社会でのふるまいを知るための経験が不足していた。
トイペをパチるキャバ嬢JD
どうにかして周りと遜色ない女子大生として存在したかった私は、とにかくいつもバイトをしていた。お金もなく腹を空かしていたのでファミレスのウェイトレスをしながらバゲットを盗み食いしたし、大学のトイペを盗んだこともある(本当にすみませんでした。返しに行きます)。
今、私が雇用主ならそんな学生は絶対雇いたくないけれど、当時は雇用主や学校の事情など想像することはなかった。知識も経験もないので、そんな遠くの人たちの事情を鑑みる想像力は持てない。少ない資源を手に、ただ戦っていた。安いパンと高級パンの両方を知っていれば、自由に選択することができる。でも、高級パンの存在を知らない人間は選ぶことができないし、背景事情を想像することなどさらに難しい。
そしてどうにもお金が足りなかった私は、水商売のバイトも。初めてクラブの面接に行くときは怖すぎて、身分証関係を全部コインロッカーに預けた。「人生が変わるかもしれない」と緊張したけれど、特に売り飛ばされることもなくわりと楽しく働くことができた。前髪が絶壁みたいになったお姉さんが実在することも知ったし、バイト終わりに友達と六本木で始発を待つのも楽しかった。
でも、それは私が全然きれいじゃないスキマ家具みたいなバイトだったからと、単にパパ活が流行っていなかったからだと思う。
パパ活ママ活って何
それから何十年も経って、日本の景気は悪くなり、大学の学費は上がった(私は始発までカフェでたむろしていたけど、今ならトー横キッズになっていたかもしれない)。
そして、SNSなどでキラキラした同年代の姿を見せられるキツさもハンパない。そんななかで、子どもが「楽なバイトがあるよ」とパパ活ママ活に誘われる。そんなリスクを持った親は今、とても多いのではないか。
リスクと書いたけれど、私はパパ活ママ活の知識が漫画くらいしかないし、自分がバイヤーになりたい気持ちもないので、ほぼ知らない。もしかしたら私が楽しく水割りを作っていたように、楽しくリスキーでないパパ活ママ活がある可能性もある。
でも、もし仕方なくその選択をするのだとしたら。
世の中にはいろんなパンがあることを知ってほしいなと思う。今は見えないけれど存在するおいしいパンがあって、そのうち食べらるかもしれないよ。
いろんな世界があり、いろんな方法がある。
私もあなたも、尊厳を大事にしなくてはならない。
どうか、ご安全に。